よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

ほうじ茶の香りを目印に神楽坂を

最近忙しくなってしまって、ほとんど更新がてきなくなってきました。
(最初からあまり更新してなかったのですが・・・)

 

それでも、どこかを訪問する用事があったり、
ちょっといつもと違う駅で降りる用事のあるときは、
児童書関連で周辺に何かないか情報を探しています。

 

先日訪れてみたのは、お店ではなく、東京理科大学にある科学関連の絵本館です。
森戸記念館という建物の中にあるのですが、
神楽坂の路地の奥にある建物で、これまた方向音痴の私にはハードルの高い探索でした。

 神楽坂を毘沙門天の手前まで上ってくると、お茶屋さんのほうじ茶を煎るいい香りが漂ってきます。
そのいい香りを目印(鼻印)にして、その角を右に曲がるとあります。

 

ここには科学に関する絵本や児童書が取り揃えられているとインターネットで知り、
ちょうど、先日の記事の中でも引用したかこさとしさん特集のムック本を読んでいた時期だったので、興味があって訪ねてみました。

 

絵本「館」、というとちょっと違うかなぁ、という雰囲気で、絵本「室」という単語の方が合う感じです。
奥の本棚にきっちりとピカピカした絵本が並んでいて、室内には、すわり心地のよい椅子が並んでいます。
私が訪ねたときは、いかにも大学で、しかも理科系のお仕事をされてそうな雰囲気の方が、ラップトップを広げてお仕事か何かをされていました。
この椅子でこの静かさだったら、確かにあまり落ち着かないチェーン店系のコーヒーショップより全然居心地がよさそうです。

 

さて、確かに、科学関連と聞いてきただけに、かこさとしさんの絵本が全体の中でかなりの存在感を示していました。
私は、かこさんといえばやはり、だるまちゃんシリーズで、理系的素質0%のわが家には、かこさんの科学の本はほとんどありませんでした(乗り物系は兄が好きだったのであったような気がします)。
そこで、ほとんど子どもの頃に縁のなかったかこさんの科学関連の本を、大人になった今だからこそちょっと読んでみたいなぁ、と、ムック本を読んで思っていたところだったのです。
それもばっちりここで読むことができました。

ムック本の中の「インタビューセレクション」で、かこさんはこう語っています。

 

 “生活を一人前にできないような落伍者が偉そうなことを言っても、読み手は鋭く見抜くでしょう。社会人としてまっとうに生きることが、絵本を描くうえでは大切だと考えていました。”

 

科学って、こうして絵本で見ていると、すぐそこに当たり前にあるものに対する強い好奇心に支えられていることがすごくよく分かります。
生活に根っこを深く張り巡らせた上で描かれた絵本だから、子どもから大人まで楽しめるし、
科学の絵本として、大きな木のようなずっしりとした質量を感じられる、、と言えるのかもしれません。

 

そこでちょっと残念だなぁ、とふと思ったことは、

ここの絵本館の絵本は、ページにあまりめくられた感触が感じられなかったことでした。
もちろん当然といえば当然で、

街の図書館ほどの来館者数や子どもの来館はないのかもしれませんが、
ちょっぴりここの絵本が寂しそうなような、そんな気もしました。

特に、かこさんの絵本だからこそそう感じちゃうのかもしれないですね。
きれいで静かな絵本館、素敵でした。でも、わちゃわちゃがやがや子どもがいて、いろんな手に触られて、時にはちょっぴりページが切れちゃったりもしても、それでもそんなまさに“手垢”や“傷”が、絵本にとってのピカピカした勲章であると思います。

 

ちなみに、本棚の上には、かこさん直筆の絵が寄贈されて飾られています。