寮の敷地内に、桜によく似た木が花をつけていて、
毎朝、そこの前を通るときに「こっちでも狂い咲きか~」と思いながら、
それでもこの桜に似た華憐さに懐かしさをもらいながら、
眺めている。
でも、
今日見たらどんどん花が増えていて、
もしかして狂い咲きだと思っているのは私の勘違いで、
ふつうにこの花の開花時期が、
この、ほぼ冬になりかけている11月の肌寒い時季なのかもしれない、
と思った。
その花の開花時期が「狂い咲き」なのか否か、という問いには、
その花のことをよく知っていない限り、答えられない。
あるいは、狂い咲きなのかもしれないけれど、
今年この時季、その花が開花してしまえ!と思ったなら、
花開きたくなる気温だと感じたのだとしたら、
それは「狂い咲き」と呼んで正しいのだろうか。
言葉はいつも、一方向からしか当てられない懐中電灯でしかなく、
あまねく照らしてくれる太陽や月の光ではない。
自分の光の射程距離を知るには、
誰しもが皆、どこかしら、自分も「狂い咲き」の分類に入ることを知り直すしかない。