スペインでCOP25が開催されていて、日本も化石賞を受賞したとニュースで見ましたが、年々、異常気象について待ったなしの状態に近づいているのは、明らかですね。
熱波、巨大台風、爆弾低気圧、メガクラスの山火事などなど、今年も自然災害が次から次へと地球のあちこちをおそいました。
そんな一年をふりかえるに、オリバー・ジェファーズの講演会に行ったときに買った、Here We Areの絵本のことが、頭の中に浮かびます。
ロンドンにあるHouse of Illustrationが主催した講演会で、キングスクロス近くのホールで行われました。
2~300人は入るホールだったかと思いますが、会場内は満員でした。
講演後に、ジェファーズの新作や、最近の絵本の販売&サイン会が行われ、新作もぜひ買いたいと思ったのですが、もうとにかく荷物の重さが尋常ではなくなっていたので、2017年に出版された、この絵本☟を購入しました。
サインには、自分の名前と、めいっ子2人の名前を書いてもらいました。
ワインを飲みながら、気さくに来場者と言葉を交わして、握手をして、サインをして、写真も一緒に撮ってくれるオリバー・ジェファーズ。かっこよくて、才能もあるうえに、やさしいんですね~。
私以上に、イラストレーター志望の友達はかなり興奮していて、並びながら言いたいことをまとめていたようです(私はもちろんこういう場合、性格が“マッティ”ですから、サインをもらって、握手をしてもらって、写真を撮ってもらうだけで十分幸せです。爆。)。
サインと一緒に描いてくれた惑星がかわいいです☟。
さて、タイトルは、Here We Are―Notes For Living on Planet Earth。
直訳するなら、
『ぼくらはここにいる:地球に住んでいる記録』
といった感じでしょうか(邦訳が出ているのかどうか調べていません。。。某動画サイトに、英語の紹介動画もあがっているようです。大きな文字では書けませんが)。
ぼくらはここにいる、とするよりも、日本語なら、
ここにいること
とした方が、ちょっとぐっとくるかもしれません。谷川俊太郎さんの「生きる」の詩のようなリズムが出る気がします。
さて、ここにいること。
この、地球という惑星の上にいるということ。
それは、どういうことかを、オリバーは赤ちゃんに語っていきます。
やあ、こんにちは。
この星へようこそ。
ぼくらはここを、地球ってよんでる。
太陽系が、どれくらい広くて、
地球は海と地面でできていて、地面には何があり、海には何があり、
そしてその上に住む「人間」ってどんなやつか、説明します。
いろんな人たちがいるよ、と。
でも大丈夫、みんな同じ人間だ、と。
そして、たくさんのいろんな動物たちがいるよ、と。
彼らは話はできないけど、なかよくしないではいられないよ、と。
つづいて、この星で時をすごすってどういうことかを、語ってくれます。
昼をすごし、夜をすごし、
ときには地上はゆっくりとした時が流れるけれど、
ときには、自分の知らないところで物事がどんどん進んでいたりする。
世界にはたくさんの発見がこれまでもあったけど、
君はこれからまだまだ多くのことを知っていける。
そして君が何かを発見したら、世界中のみんながわかるように記録を残しておいて。
地球は大きく見えるけど、
その上には「73億2千7百45万667人とまだまだ」続く人間たちが生きている。
でも、みんなに必要なだけの場所がある。
そのほかのことで、何か知りたいことがあったら、何でもたずねて。
ぼくはここにいる。
・・・と、最後にここで、オリバーは
「ぼくがそばにいないときは」
といいます。
そしてこの結末が、絵本をとにかくとっっってもすてきなものにしています。
ーーーーーー(以降ネタバレ)ーーーーーー
君はいつだって誰かにきくことができる、というのです。
だって、地球の上には、たくさんの人が住んでいるから、
地球の上では、君は、決してひとりぼっちではないから、
と。
(最後の見開き2頁はユーモラスでありつつも、あたたかい気持ちにさせてくれます!写真はあえて載せません。)
この絵本は、必ずしも環境問題を訴えているような絵本ではありません。
むしろ、世界中のいろんな人たちや、ほかの多くの命を抱えているこの星に、なかよく生きていくことは楽しいよ、という、そんな共存のメッセージの方がかすかに鳴っている本かもしれません。
でも、世界中の人たちと、この星のすべての生きものと共に生きていく、ということは、つまり、地球とともに生きていく、ということでもあると思います。そんな、壮大な話のようでありつつも、それはただ、あなたのほんの足元の地面の面積ほどの話だよ、という身近さも感じさせてくれます。
最後、絵本を閉じたら、裏表紙を眺めながら、しばし考えてもいいかもしれません。
裏表紙には
地球をさして、「⇦すべての人がここに住んでる」
月をさして、「⇦ここには誰も住んでいない(まだ!)」
と描いてあります。
そう、人間はこれまでもこれからも、地球の上で生きていく。
人間が、太陽系内の他の惑星に移住できる日がくるのが先か、
それとも地球が滅びるのが先か、だったら、
このままいけば、間違えなく、先に地球が滅びるんだろうな、と私は思います。
誰もいない見知らぬ星に住みたいかい?
と、逆に問われているような裏表紙が、いいなぁ、と思いました。
この星の上で、私たちには、たくさんの仲間がいて、たくさんの動物たちがいて、一緒にこの星がまわる一日をすごす。
さながら、俊太郎さんの「朝のリレー」のように、
交替で地球を守る
のかもしれないけど、本当に地球を守っているのかどうかは、もう、わからない。
人間の活動は、そのほとんどが、地球を疲弊させることが多くなってしまったから。
いつも守ってくれていたのは、地球の方かもしれません。
今、COP25が開かれていて、世界中からVIPやらNGOやら、グレタさんや若者などなどが集まっていますが、まさにこうした、あらゆる地域のあらゆる人たちが、この同じ惑星の上にいる、ということを、最後の見開き2頁が表現しているようです。
そう、この星にはたくさんの人が住んでいます。
一人じゃないし、一国ではない。
だから相談もするし、知恵をもちよることもできる。
絵本の冒頭に、J. M. Barrieの言葉が引用されています。
Shall we make a new rule of life from tonight: always to try to be a little kinder than is necessary?
COP25では、こんなふうに言えるでしょうか。
今晩から新しいルールをつくろうじゃないか、と、言えるでしょうか。
a little kinderではもはや済まされない中で、
私たちはもっとずっと優しく暮らすことができるでしょうか。