よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

つきあかりのなかのせかい

i see in the dark better than most people and hear things at night hardly anybody else does.
i want to be a sort of superhero. maybe i am already, just a while.

 

 ― Angela Johnson  ’a cool moonlight’ 

 

アンジェラ・ジョンソン。

実はけっこう好きです。

日本だと、『朝のひかりを待てるから』、『天使のすむ街』の邦訳があります。

イギリスに行ったら、他の作品も買って読んでみよう、と思っていました。

上の引用は、 'a cool moonlight' という小説からの一節ですが、私のタイポなのではなく、この小説には、大文字が一切使われていません

それが、小説にとって、とても効果的にはたらいています。

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主人公は、全身性エリテマトーデス(SLE)の日光過敏症の少女です。

私がこの本に興味ひかれた下敷きとして、ずっとずっとずっと前に、テレビでこの難病の双子の男の子のはなしを観た記憶が残っていたからだと思います。

太陽の光を浴びると、皮膚が水膨れのように炎症を起こしてしまう難病で、昼間は外に出られず、太陽の沈んだ夜だけが、外に出られる許された時間です。

確か、映画とテレビドラマにもなったような(どちらも見ていません)。

「キャピタルレター」の一切出てこない一人称の語りが、この病気の状況を非常によく表現しています。語りにひそやかな印象を与えて、誰かが夜中にささやいているようなトーンをつくりだしています。

日本語だと、どんなふうに表現できるでしょうね。難しいですよね。

例えば、全部ひらがなとカタカナだけで書かれていたら、少しはそれに似たものになるかもしれません。

 

・・・試しに、全部ひらがなで書いてみますか ( ・ω・)+

 

ものがたりのしゅじんこう、リラは、たいようのひかりにあたることができないびょうきのしょうじょ。

よるしかそとにでることのゆるされないリラには、ちょっとかわったともだちのアリッサとエリザベスがいる。

まいばん、かれらがあそびにきてくれるのを、たのしみにまっているリラ。

そしていつか、たいようのしたではしったり、くるくるとそくてんをして、みんなをおどろかすんだ、とおもいながら。

 

リラはかんがえる。

 

じぶんもスーパーヒーローになりたい。

でも、もしかすると、

もう、ヒーローなのかも。つかのまの。

 

だって、リラは、ほかのひとたちには、しることのできない、せかいのうらがわをしっているから。

つきのひかりのなかで、うらがわから、せかいをみる。

よるのせかいの、おとをきく。

 

とくべつななにかをかかえていきているひとは、きっとみんな、ちょっとしたヒーローなんだとおもいます。

ちょっとまえにかいた『ゴドーをまちながら』のことばのように。それだけで、にんげんぜんいんの、だいひょうしゃなのだとおもいます。

 

私の暮らしている部屋は、公園の横にありますが、休業要請が出されて以来、夜の公園に来る人が増えたように思います。

もともと、夜の公園は、あたたかくなってくると、うるさくなります。夏は、夜中、てっぺんを越えた時間からやってきて、わぁわぁと騒ぐ若者がいたりします。

緊急事態宣言のおかげで静かだ、と思っていたら、休業要請が出て以来、8時すぎから、つまり、飲食店が閉まったあたりから、若者や大人が、ちらほらと公園に来るようになりました。

いつもは夜遊びできていたのに、今は行く場所が無いから、飲んだあとで公園に来るのでしょうか。

その分、警察も取り締まっているようではありますが。

 

裏側から、いろんな角度から、物事を見られるようになった方が、世界はおもしろいと思います。

それは、自分ただ一人の考えから、脱してみるチャンスをくれます。

そして、誰かの物語や命を、大切にできるようになるはずです。

それが、心の筋力の幅を、広げてくれるのだと思います。

 

世界が逆転してしまったような2020年。

リラのように、写真のネガ側から、世界を眺めているような気がします。

その次にくる世界が、どんなふうな色合いになって立ち現れるかは、まだ誰にもわからない。

あ・・・。「写真のネガ」という表現は、きっともう死語ですね( ̄ー ̄;)

 

今日も、動画を貼っておきます♪

こちらは地球の裏側から届く、とってもすてきな歌声です。

コメント欄に、今日も奮闘するヒーローの感想を、ピン止めしてくれているところに、彼らの優しさを感じます。

 

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