よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

(訃報)マーガレット・ミーク

マーガレット・ミーク(Margaret Meek)の訃報記事を今朝読みました。

先月4日亡くなられたらしく、95歳だったそうです。

 

95歳だったのか~、ということを知って、あらためて、早い時期から子どもの読書の研究が始まっていたイギリスの底力を感じます。

留学したコースが特にリテラシーの観点を強く打ち出していたので、入学前の必読書リストに入っていて、初めて読みました。

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私はメモっておきたいところがあると、すぐに本にドッグイヤーをつけてしまうのですが、マーガレット・ミークのこの本は、ドッグイヤーだらけで、そこにいちいち付箋をつけなおすのもやめてしまいました(笑)。

最初に読んだときは、内容が少し抽象的に感じられ、当たり前なことが書かれているように響いて、そこまで(ニコラエバの論文を読んだときのように)感動するというほどではなかったのですが、きっとそれは、今でこそ読書とは、こういうものですよ、という概念が出来上がっているからかな、と思います。

でも、その当たり前のこと、つまり普遍的なことを、誰かが言葉にして「形」にしないとそれは当たり前にすらなりません。

2年ぶりにドッグイヤーのついたページをちょっと開いただけで、濃縮された格言のような文章が目に飛び込んできます。

 

From the stories we hear as children we inherit the ways in which we talk about how we feel, the values which we hold to be important, and what we regard  as the truth. We discover in stories ways of saying and telling that let us know who we are.

子どもの頃に聞く物語を通して、自分の感じたこと、大切だと思う価値、そして、真実だと信じるものを語る方法を受け継ぐのです。私たちは、己が何者であるかを知らせてくれる話し方、語り方を、物語の中で見つけるのです。

 

今あらためて読むと、簡潔明瞭な言葉で、とても大事な真実が語られています。

インプットとアウトプットの問題が双方向であって、読むことは情報や知識を得るためだけではなく、それがあなたのアウトプット手段のお手本を示し、育てますよ、という読書の妙を的確に提示してくれています。

そして、どうしてアウトプットが必要か、というと、それはきっと人間がお互いを理解し合いたいからでしょうね。自分を相手にわかってほしいと思うこと、相手について知りたいと思うこと、そしてそれを言葉で行おうとすることは、人間の尊い懸命さだと思います。

それができないと、手が出たり、叫び声で訴えたり、ミサイルを打ち上げてみたり、違う"コミュニケーション"手段で訴えようとしますから。

 

邦訳も1冊出ていますが、英語が今の学術書のように込み入ってお堅いものではないですし、原文で読むと英語の勉強にちょうどよいです。

折にふれて戻りたい、と思う1冊です。

 

We not only thrive on stories; we also survive by telling and retelling them, as history, discovery and invention.