よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

どんどんどんどん

数というものは無限にあって、ごはんを食べる間も、寝ている間もどんどんふえて、喧嘩が済んでも、雨が降っても雪が降っても、祭がなくなっても、じぶんが死んでも、ずうっとおしまいになるということはないのではあるまいか。数というものは、人間の数より星の数よりどんどんどんどんふえて、死ぬということはないのではあるまいか。稚ない娘はふいにベソをかく。

数というものは、自分のうしろから無限にくっついてくる、バケモノではあるまいか。

  ――石牟礼道子『椿の海の記』

 

「日々の数字」の増え方がちょっと尋常ではなくなってきましたね。

個人的には、もう私たちが気がついたころには、じわじわとイギリスの変異種が入りこんで広がっていたのかなぁ、と思っていたりして。

 

増加具合に、石牟礼道子のこの言葉を思い出した次第です。

数字を、ウイルス的な感覚で感じていた石牟礼さんの感性が凄いな、と思わされた言葉です。

主語の「数」のところを、ウイルスとか感染に換えたら今の状況を物語っているようでもあります。

ごはんを食べていても、寝ていても、雨が降っても大雪になっても、いつも世界のどこかでどんどん増えつづけているもの。そしてさらに悪いことには、変容して再び増殖力を増す。

 

いろんな人に新年のメッセージを出し、いろんな人から新年のメッセージをいただいて思いましたが、ある意味では、「とにかく健康で、とにかくこの期間を生き抜けばいい」というのは、こう言ってはなんですが、今は人間としてなんともシンプルな目標をもらっているような気もします。

元気にこの期間を生きのびたら、何かいいことが待っていてくれるといいんだけど、と寒空を眺めて思うばかりです。