よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

楽しむことだけでいい。

行ってきました、国宝ちょーじゅーギガ展!

 

圧巻でした。圧巻のカンはまさに「巻」ですが、『国宝鳥獣戯画のすべて』というだけあって、甲乙丙丁四巻そろい踏みなのはもちろん、甲巻から断簡されて(切り離されて)掛け軸になったものも所蔵元から今回の展示のために持ってこられてました。

コロナ禍でアメリカや国内の所蔵元から取り寄せることになった各所の協力に対して、お礼がきちんと説明の横に付されていて、本当に今、東京に"閉じ込められていて"よかったって思いました。

本当なら、外国の方も多く詰めかけていたかもしれないのでしょうが、より多くの人の眼に触れるにはコロナが痛手になってしまったのは残念なかぎりです。

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とはいえ、です。

予約制だってなかなかな人でした。

グッズ売り場は「蜜」いえ、「密」以外のなにものでもなく。それこそ甘い蜜にむらがる夏の虫たちのように、人気のあるグッズまわりは人だかりで近づけなかったりしました。

個人的には烏帽子をかぶったネコのグッズがもうちょっとあってもよかったのにぃ、、、と思いました。有名なうさぎとカエルの相撲などは展示でわざわざ買い求めなくてもそれなりに巷でみつかりますから。

烏帽子のネコとその隣のカエルがとてもいい表情なのです☟コレ(展示品一覧資料より)

カエルが、あんれまぁ、とか今にも話し出しそうな顔をしています。

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第1会場を入ってすぐの模本とかは、あ~模本やねぇ、ていう感じなのですが、

その横にある甲巻の映像を流しているところは、一通り観ることをおすすめしたいくらい楽しかったです。

単純に甲巻が横へ流れている映像なのですが、「あまちゃん」や「いだてん」を手がけられた大友良英さん作曲の音楽とともに楽しめて、とてもルンルンしてくるものになっていました(この音楽をダウンロードできるならしたいくらいです。グッズと一緒に売ってくれればよかったのに)。

ここで、見るぜ鳥獣戯画っ!ていう気合がいちだんと入ります。

実際の甲巻展示では、絵巻自体を横に流すのではなく、人間が動く歩道で横に流されていくわけで(笑)とどまっている物に対して自分が動きます。

でも、映像では絵巻を繰っているように、巻物が流れていくそのさまを楽しむことができるのです。

いかにこの鳥獣人物戯画に「巻物」としての楽しみがつまっているかがよくわかります。横を見てびっくりしている動物たちの表情を見つつ、彼らの見てたものが出てくるとか、本当に絵本の原型の原型くらいのものがここにあることに感激しました。

 

この展示に「行きたすぎる」という記事を書いた折に、日本の児童文学紹介を留学中にして、この巻物のはなしもチラっと出したと書きましたが、実際に甲乙丙丁を全部見比べてみて、さもありなん、と思いました。

これ(甲巻)を描いた人はとても楽しんで描いていたんじゃないか、と思うくらい、動物たちの表情がとてもゆたかで愉快で、『たのしい川べ』くらい楽しい(笑)。

きっと、それぞれの動物がどんな会話をしていたのか、描き手はすべてわかっていたかもしれません。その想像力のまさに「力」を観ている側も存分に感じとれる。

心がその空想に乗っていっしょに飛翔できる"何か"は、きっと児童文学やファンタジーの精髄とつながっていると思います。

そしてそこでの条件は、本来ただひとつ、楽しむことだけでいい。

そうするとなんだか、今ある自分のこの生も、まあこれはこれで楽しんで生きてみるか、という軽やかさをにわかにとりもどせる。ような気がする。

軽やかさ、愉快さ、元気のよさ。

そのエキスが完璧なかたちで表現されている巻物です。

これが国宝であることをとても誇らしく思いました。