よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

ショーン・タンの世界展に行ってきたはなし

横浜のそごう美術館で開催されていた「ショーン・タンの世界展」へ行ってきました。

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今年のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したショーン・タン。

(その本についてはこちら☟)

nplmanatee.hatenadiary.jp 

現在はメルボルン在住。オーストラリアが誇るクリエイターの世界観を堪能しました。

展示の順路を教えてくれるエリックから、『アライバル』のオタマジャクシのようなウーパールーパーのようなディギー(愛称)から、セミ、ロスト・シングの赤い彼まで、ちょっと寂しそうで、でもユーモラスで愛さずにはいられない彼らが出迎えてくれます。

こういう作家さんは、ある意味では、オーストラリアならではなのではないか、という気がしました。

あの南半球の独特な大陸が育んだ多くの固有種とそれらが織りなす一大生態系の中で、オーストラリアには、人間もまたその大自然に包み込んでもらえるような懐の深さがあります。砂漠地帯、熱帯雨林地帯、豊かなサンゴ礁、雪山、真っ白な浜辺、豊富な地下資源とオパールなどなど、地球が経てきた年月の壮大さがぎゅっと詰まった大陸。特にあの動物たちのユニークさと愛嬌は世界の中でも群を抜いています。そしてオーストラリアの人たちはそんな自然も動物も心から愛しているのがよくわかるし、きっと動物たちも「愛されてるかも(= ̄▽ ̄=)」と理解しているんじゃないか・・・(笑)という気すらします。

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(展示の最後の撮影OKコーナーから)

そんな動物や植物に囲まれて暮らし、彼らの視点から覗いてみたときに見い出される人間の社会の別の姿が、ショーン・タンの世界観には表れ出ています。

セミ』をつらぬく哀感と、結末に控えている世界の転倒。

最新作のTales from the Inner Cityで、人間の世界に殴り込みをかけてくるような動物たち。

彼の作品から、オーストラリア大陸の要素を外して見ることはできないのではないか、といつも思います。それくらい、地球上のどの地域からも誕生しないような独自性があって、その破壊力に圧倒されます。

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(天才の頭の中をのぞくこころもちがします)

原画の一つ一つを見ているうちに、頭がくらっとしてくるような、

一体私が日常で持っていると'錯覚している'この「常識」とは何だったのだろう、それはどこまで有効なルールだったのだろう、本当は、人間中心に安全に生きていくための方便ではなかったか、

と、そんな感覚に陥ります。

彼の描く絵画全体から立ち上がってくるものは、一種の「地球観」と呼べるものかもしれません。

彼の体内には、回りの人たちだけではなく、動植物すべての命が取り込まれていて、それらが溶かし込まれて、手にした鉛筆と絵筆からあふれだすのでしょう。

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(ファンタジックなものほど緻密な積み上げがありますね)

近頃、

人間って、人間の大きさって、どれくらいのものを自分の中に溶かしこめるか、どれくらいのものに自分を明け渡せるかなんだなぁ~、、、

とそんなことを考え続けていて、今回、ショーン・タンの原画を見られて、つくづく彼の中の宏大さを感じました。

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(「私」とは関係性の塊であるということ)

オーストラリアでよく売られているお土産に、「逆さ地図」があります。北半球と南半球が逆向きになっているもので、南極を上にして、南半球のオーストラリアとニュージーランドを中央に据えた世界地図です。ショーン・タンの作品に潜んでいるものは、そんな

《 Down Under 》からのメッセージ性

なのかもしれません。

 

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☝展示の最後は、彼のワーキングスペースを再現したようなコーナーが設けられていて、ここは撮影OKになっています。

ひとつひとつのイラストが本当にかわいいです!

ディギーの写真も!☟「no junk mail thanks」と言ってます(笑)


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ショーン・タンのポストに毎日郵便を届けてこのイラストが見られる郵便配達員さんがうらやましい。。。

最後、物販手前のところでは、エリックと記念撮影ができるコーナーが設けられていました。

そしてこちらです☟横浜そごうがうらやましすぎる(爆!)!


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35周年の記念のイラストです。

コロナ禍で百貨店業界はかなり深刻な影響を受けていると報道されている中、この「これからもいつまでも」というひらがなと、葉に乗って手をふるエリックに、少しじ~んと来るものがありました。

(そごうのポイントカードもずっと持ってるけど、そういえば、お財布にはもう入れてなくて引き出しのカードケースに入れっぱなしだなぁ。。。)
こんなステキなイラスト描いてもらっちゃったんですから、横浜そごうさんは閉店できませんね。ぜひぜひ、これからもいい展示をやってほしいし、横浜西口の駅からルミネ、地下街、そごう、丸井までのこのショッピングエリアに元気でいてほしいです。私にとっては今でも新宿なんかより全然買い物しやすいエリアです。

 

物販コーナーで姪っ子のお土産に買った☟こちらのお菓子が可愛かったです。


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正直、カンカンはディギーのシールが貼ってあるだけなのですが、このコンペイトウのようなあられの形状がショーン・タンの愛嬌のある生き物っぽくて妙に合っています☆素朴なあまさがおいしく、お茶などに浮かべると、ぷかっと浮いてきますよ。

 

オリジナル・グッズを2500円以上買うと、☟こちらのオリジナル・シールがもらえます。

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ショーン・タンの世界展は、18日までです~。