よむためにうまれて

上昇気流にのって旋回する沖合いのカモメのように、子どもの本のまわりをぐるぐるしながら、ぷかぷかと日々に浮かぶマナティのような個人的記録も編んでいます。

曇耕晴読

猛暑でへばってしまい、ずっとエアコンの中にいるせいもあって、

なんとなく気だるくて、そして食欲がない状態でした。

そこへ来ての、この週末の涼しさ。

一気に体に元気と食欲がめきめきと出てきて。

なんか、そういう砂漠の生き物とか植物いますね。

仮死状態で過ごしつつ、雨が降ると一気に息をふきかえすやつ。

とはいえ、山形や北陸も心配ですね。

とにかく昨日今日明日と、涼しいうちに出かけています。

そして、7月は忙しくて行けていなかったボローニャ展に今年も。


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今年は、韓国、台湾、中国、イラン勢が際立っていました。

イランはもともと、野間絵本原画コンクールの常連かつ大量応募国でしたけど、ボローニャでもイランの個性は抜群ですね。

そして、何といっても韓国!

韓国の絵本は——肌感覚的にですが——今や、世界のトレンドをリードしているような気がします。

とにかく、すばらしい。

中でも惹かれたのはイ・スンオクの『空のかけら』でした。

実際の絵本が展示スペースの中央に置かれていて、手にとってじっくり読めるようになっていて、こちらの作品も置いてありました。

カップルが一組じっくり時間をかけて見ていらっしゃって、それを待って私もすかさず手に取りました。

空の青さの意味とか、

空の青さが何かに映ることの意味とか、

そういうのを、

水たまりを覗きこむような感覚で味わわせてくれる清々しさがあります。

そうして覗いていると、

深い水たまりの向こうへ降りていくかと思いきや、

空につきぬけていくような感覚にさせてくれます。

書いてあるハングルは分からなかったんだけど、でも絵だけでも十分わかる絵本でした。

 

次に印象的だったのは、台湾のペイジ・チュー作『かくれんぼ』かな。

外交官にして博物学者のイギリス人が台湾へやってきた話で、ある部族の長(?)から話を聞いて興味をもった幻の雲豹を探します。しかし、これが全然みつからない。さらに次にやってきた学者(?)がまた探そうとするけれど、風景はどんどん近代化の中で変わっていく。。。いったい雲豹とはどんなもの?どこにいるの?

と・・・これは私が大学時代に取っていた中国語を頭の片隅から思い出しつつ、わかる漢字を追って、組み立てた❝なんちゃってあらすじ❞ですが、でも、ラストの見開きはすばらしかったです。

絵に浮世絵のような独特の味を出していて、そのあたり、もしかして日本に占領されていた時代の開発なんかも踏まえて敢えてそうしてるのか、どうなのかなぁ、と考えたりしました。

これは日本語訳出てほしいな~。『空のかけら』と合わせて。『空のかけら』はもう翻訳の話が進んでいるかもしれないですね。

 

それから、もう一つ気に入ったのが、中国のリウ・ロンシャの原画。展示で表示されている作品名は「1ってどう書くの?」となっていますが、こちらも絵本スペースに原作が置いてあって、原作は『不一様的1』。『いろんな1』という意味の作品です。

熊の先生に、今日は動物たちが「一」の書き方を習う。蟹は自分の進む方に歩いて筆をひっぱれば、「一」!蟻の「1」を熊の先生は虫メガネで見て、「いいね」。小鳥の1は小枝の「1」。蛇の1は、書かなくったって、自分の体で「1」。それなら、犬の「1」は、大好きな骨を立てた「1」。あれ?豚さんがいないけど、豚さんはどこいった?

という物語でした(これも、私の❝なんちゃって中国語❞による読解ですので、あしからず)。

これもぜひ邦訳されるといいな~。もしかすると、これもどこかで翻訳の話が進んでるかもですね。

それぞれの1と一、全部いいね、という熊の先生がステキです。イラストの空気感と内容が非常に合っていて、あたたかい肯定感をくれます。

 

その他、備忘を兼ねて、特に印象深かった原画を列挙しておきます・・・

● モナ・アーモリー(イラン)「皇帝と衣装」

(THEイランの原画の王道みたいな品格すら漂っていて、素敵でした)

● ダーレ・ブランケナール(南ア)「うそつき鳥」

(これも。だから、ボローニャ展が楽しみなんだよねー!と思わせてくれる独特の色使いがすばらしかったです)

● 北村麻衣子さん(日本)「森のセッション」

● アンドレス・ロペス(メキシコ)「岸辺の大おとこ」

● マーライ・マリアン(ハンガリー)「ヤサイトクダモノ」

(こういう東欧独特の色使いと、かすかなシュールさ、時々恋しくなりますね。いいです)

● アマンダ・ミハンゴス(メキシコ)「ぼくのパパは書記」

● ナ・ウンギョン(韓国)「森の中のこども」

● パク・ヒョンミン(韓国)「普通の道」

● エレオノーラ・プリマヴェーラ(イタリア)「海の発明」

(今回は開催地イタリア勢も結構印象に残りました。スペインと合わせて)

● ヒナ・ロサス・モンカダ(コロンビア)「熱帯」

● ヌーシーン・サーデギヤーン(イラン)「ダールの娘」

● ロザリー・スミス(イギリス)「船をつくる」

(どうしてだろう?イギリスのイラストって、国名見る前から、イラストを見た瞬間に「あ!これイギリスでしょ」とわかるんですよね。アメリカでもカナダでもなく、これはイギリス、ていう色合いをちゃんと湛えているんですね。他に、イギリスの受賞作で、「大きな大きな赤ちゃんのはなし」(エレノア・ラヴェンダー)という作品も展示されてましたが、これも観た瞬間に「イギリスでしょ」てわかるんです。はっきり言って、イギリスの絵本の配色を総合して見ると、色は決して明るくない。暗いんです。でも、その中に、しっかり「イギリス」の香りを感じるんですね。不思議ですね。特にこれはその典型例だったかもしれない)

● エレナ・バル(スペイン)「ネルソン・マンデラ

(すごくいいです。ちょっと懐かしいような、アメリカのポップカルチャーっぽさも感じました)

● ユ・イン(中国)「お父さんのお茶畑」

(こういう、❝古き良きイラスト❞のスタイルに、いつまでもいつまでも、賞をあげていてほしいし、いつまでもいつまでも、こういうスタイルに失くなってほしくない、と思いました)

 

来週の天気予報ではまた猛暑予想みたいで、今年は猛暑の日は、家でひたすら読書と書きもの、と決めました。

 

というわけで。いつも記録が開催期間に対して遅いんだけど(笑!)、今年のボローニャ展でありました。

めでたしめでたし。

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