前回の大学列挙編の続きです。
さてさて、以下、イギリスの大学がどどどどと続きます。
さすが児童文学王国イギリス。
私の調べた限りでは全部で6校が児童文学の修士以上のコースを持っていて、
それぞれに特色があります。
1.ローハンプトン大学
何といっても、まずイギリスはこの大学の紹介からでしょう。
日本の児童文学研究者の中でも、川端有子先生や、玉置智子さんが留学されたことで有名です。
国立児童文学センターをもっていて、
児童文学に関連する会議やフェスティバル等が開催され、イギリスの中でも中核的な存在感を放っている大学です。
そして、学長があのジャクリーン・ウィルソンです。
(私はそんな方が学長だと逆に恐縮してしまう・・・)
とりあえず、児童文学の王道な場所で勉強したい、という方はここになるのかもしれませんね。
きっとすごく贅沢な1年間が過ごせることでしょう。
玉置友子さんの『イギリス絵本留学滞在記』(風間書房/2017)は、
ここの留学滞在記です。
ものすごい勢いで勉強されていた様子や、
ローハンプトンの授業の様子、
ホームステイ先、ロンドンやイギリスの医療事情などの生の留学体験と、
その後の留学経験がどのように生かされてくるか、
そんなものを疑似体験できるような本です。
最後少し、せつない想いもまざる回想が、
私も自分のプライベートの事情と重なってとても共感できました。
そして、何よりこちらの本に励まされたのが、
何歳になっても、留学できる時期として遅いということはなく、むしろ、
学ぼうと決めたタイミングは、いつでも最善の時である、
と思えたことです。
すばらしいです。
2.レディング大学
私はローハンプトンに気を取られて(?)こちらをあまりよく調べませんでした。。。
でも、確かレディングは通信でのコースも開講していたかと思います。
そして何より、こちらは、
イギリスで初めて児童文学の修士以上の課程を開いたことで有名です。
3.アングレア・ラスキン大学
こちらの大学は、絵本のイラストレーター専門の修士課程を有している唯一の大学です。
こちらから輩出されたイラストレーターも多くいて、
日本人の方でもこのコースから羽ばたいていらっしゃる方がいますね。
主に絵本の研究に没頭したい、
将来絵本作家になりたい、という方はこちらの大学が優先上位に入ってくるのでしょう。
もちろん、絵本作家用のクリエイティブ・コースへの出願にはポートフォリオが必要になります。
4.ケンブリッジ大学
多くを語る必要もなく、あのケンブリッジです。
今現在、コースを率いていたのは、あのマリア・ニコラエバでしたが、
どうやら退官されてしまったようです。
退官する前にニコラエバの元で学べたなんて、夢のような、
まさに世界最高峰な環境だったんでしょうね。。。。
羨望の念を禁じえません。
児童文学を学ぶ者にとってはスーパースターです。
ご興味ある方は、ニコラエバが日常を綴っていらっしゃるブログがあるので、
チェックされたらよいかと思います。
(ブログのタイトルがかわいいです ^-^)
こちらのコースは批評的な児童文学に対する理論や解釈が学べるコースです。
幅広く児童文学の歴史や作品を、というよりも、
児童文学をさらに深く掘り下げて、一つ一つの文章を、言葉を分解し、
まさに重箱の隅をつつくように学びたい、
児童文学に関係するあらゆる理論を学びたい、
という方、そして何より、
PHDを見据えて大学院を選択される方は、
こちらが有力候補になるだろうと思います。
5.グラスゴー大学
グラスゴーは、School of Educationの中に、児童文学のコースを2つ持っています。
1つは「児童文学およびリテラシー」で、
もう一つは「児童文学・文化・メディア」という、
複合領域構成になっていて、とても珍しくて魅力的なコースです。
「児童文学・文化・メディア」はInernational Masterの2年間のコースになり、
1年目をグラスゴー大学で、そして3セメスター目を、
オランダかバルセロナかグラスゴーのいずれかの大学で学べるという
何とも贅沢で多彩なコースです。
そして最後の4セメスター目を修論に使える、という余裕もあって、
英語圏留学初&修士課程初、という慣れない環境で修士号を取る日本人にとっては
かなり魅力的な条件になっています。
昨年開講するはずのコースは、予算の都合上閉講となりましたが、
(これだけ持ち上げるだけあって、私はこのコースにどうしても行きたかったのですが、Unconditional Offerが水の泡と消え、撃沈しました。。。)
今年9月からの開講は確実のようです。
グラスゴーの特色は、
児童文学の理論的な部分以外に、子どもの読み解きについても学べること、
教師向けであることが言えると思います。
子どもに関わる過程で児童文学を学びたい、と思われた方には
こちらの大学のモジュールはとても興味深いと思います。
ただし、
文学として、芸術としての児童文学を念頭におかれている方には、
お薦めしません。
6.ゴールドスミス大学
ゴールドスミスの特色は、児童文学と社会との関わり、
社会のさまざまな要素がどのように児童文学に反映されていくか、という側面から
切り取った構成になっているようです。
アーティストやデザイナーも輩出している芸術方面で有名な大学だけに、
そうした雰囲気を味わいながらロンドンで児童文学を研究できるというのも、
ここにしかない環境ですね。
また、クリエイティブ・ライティング のコースも持っています。
そして何といっても、マイケル・ローゼンがコースのスーパーバイザーです!
ロハンプトンに続き、有名作家さんで学生を呼び込めるのもイギリスの大学の特徴かもしれません。
日本だと、上橋菜穂子さんが大学で教えてらっしゃいますが、
児童文学自体を教えているわけではないので、
創作しつつ研究にも参画する、というのはイギリスに特徴的なのでしょうか。
個人的には、理論的なことを研究してしまうと、創作にその知識が介入してきて
逆に「邪魔」にならないだろうか、と思ったりもしますが。
来年度あたりから、ゴールドスミスもコースをさらに特色づけるべく、
現在変革を進めているようです。
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